仕事に息詰まるとお腹が空くほうだ。
今日もそうだった。どうしてもうまくいかないことがあって苦労している間にとてもお腹が空いてきた。
こうやって平静を装って少しの間は我慢していたけれど、長くは続かなかった。
僕は諦めて、まだ11時だったけど、早めの昼食を作ることにした。
メニューはポーク玉子。僕の大好きなメニューである。
ポークを焼くと、小さい頃のことを思い出す。
僕の家族はみんなポークが大好きで、うちの家庭ではよく食卓に出ていたのだが、特に朝が多かった。
朝目覚めて、秒でテーブルについてすぐに母親が焼いてくれたポークとご飯と味噌汁を食べたものだ。
特にカリカリに焼いたやつが好きで、それさえあれば何杯でもご飯が食べられた。
サクッとかじると、中から旨味が溢れ出てきて朝からとても幸せな気分になった。
でも毎回幸せになれたわけじゃない。なにか気にかかることがあって憂鬱な気分なときは、うまいと感じるどころではなかった。
友達と喧嘩をしたり、大人に怒られるようなことをしてしまったときなどである。
それから、猫が何日も帰ってこないときもそうだった。
子供の頃、僕は猫を飼っていたのだが、田舎なので猫が望めば自由に外に出していた。
外に遊びに行った猫が家に帰ってこないことはよくあって、初めはそういうものなのかと気にしていなかったのだが、ある日そのまま帰ってこなかった。
僕は外出した猫がふといなくなってしまうことがある、ということを知った。そういう生き物なのだと。
それ以降、自分の家の猫が戻ってこないと心配で心配で仕方がなくなった。
帰ってこないときは、猫の名前を呼びながら家の周りを歩きまわった。
楽しく遊びつづけているならいいけれど、もし道に迷ってお腹をすかせながらさまよっていたら、どこかで怪我をして動けなくなっていたら、そう思うと居ても立っても居られなかった。
たいていは何事もなかったかのように猫は帰ってきたけれど。
猫が帰ってきたら僕はちょっと高い餌を猫にあげて頭をなでた。
ポークを食べるとき、僕はそういうことを思い出す。
あのとき食べたご飯やみそ汁の味。そして猫をなでたときのなめらかな手触りを。
ちなみに、卵焼きには白だしを入れるのが好きだ。そしてめんどくさいのでフライパンにあけてから混ぜて焼く方である。
完成。
とても満足度の高い昼食だった。
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